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(2014年3月7日 / 福田 遊 )

TVACレポート

介護者支援でつながろう〜平成25年度家族介護を考えるつどいを開催しました

キーワード
介護者 、 つどい 、 カフェ 、 サロン



家族など大切な誰かの介護看護お世話を担っている方が、地域にはたくさんいることをご存じでしょうか。

あるいは、この記事をお読みの方の中にも、誰かのケアをしながら暮らしている方がいらっしゃるかもしれません。


そんな介護者(=ケアラー)といわれる方々が集まってひと時を過ごす「家族介護者の会」(以下、「会」)という場が地域にはあります。

開催の形式や名称は様々ですが、他の場所では言えない一言や、悩みなどを話せるそんな当事者同士の集まりです。

このような「会」の存在を知ってほしい、「会」の活動を応援し、「会」同士をつなげていきたい…。

そんな思いから、私たち東京ボランティア・市民活動センターでは、キリン福祉財団より助成を頂きながら、「家族介護を考えるつどい」(以下、「つどい」)という事業を2008年から開催してきました。


過年度の開催レポートはこちらをご覧ください→平成21年度平成24年度(その他の年度はレポートの掲載をしておりません。ご了承ください。)

どちらの年度も報告書を発行しております。ご入り用の方はお問い合わせください。


開催から5年を経て、都内の各地域では、「会」の活動が、まだ十分とは言えないまでも広がってきています。

また、全国的にも同じような動きがみられ、介護者介護者支援というキーワードでいろいろな団体・機関が取り組みを行うようになってきていました。


そこで、今年度の「つどい」では、このような「会」をどう支えていくのかという点を大きなテーマに据え、当事者や支援者がどのようにつながりをつくっていけるかを考えたいと、

これまでとは少し趣を変えた内容での開催とすることにしました。

2014年1月18日(土)、120名もの方にご参加いただいた当日の様子を、ここにご紹介します。


基調講演とパネルトーク 「介護者支援でまちづくり」

基調講演

基調講演では、栗山町社会福祉協議会の吉田義人さんよりお話しをいただきました。

北海道は夕張郡にある栗山町は、人口13,000人ほどの小さな町。町の高齢化が進行するなか、一人暮らしの高齢者の増加や老老介護の世帯、買い物難民の増加といった現状があったといいます。

画像吉田義人さん

そんななか実施した「ケアラー(無償の介護者等)調査」(注1)で、ケアラー自身が健康に不安を抱えていること、買い物・通院など日常生活に不安があること、地域や情報と疎遠になっていることなど、既存の制度では解消できない地域課題が見えてきたそうです。

そこで、吉田さんらは地域全体で支え合う仕組みづくりを育ててきました。いま栗山町では、‘地域で支え合う行動’につながるよう、社会福祉協議会が採用した在宅サポーターが、ケアラーのいる世帯や70歳以上で一人暮らしの世帯を定期的に訪問し、その状況を民生委員や行政に伝える仕組みや、55歳以上の人に専門技術や特技を生かして地域で活動してもらい、その活動時間に応じてボランティアポイント(公共施設の利用料として使用できる)を発行する仕組みなど、さまざまな事業を展開しています。

特に注目されているのが、「まちなかケアラーズカフェ」の創設で、誰でも来ることができるこの場所は、介護者の息抜きだけでなく、ボランティアの活動の場地域の人々の交流の場にもなっているようです。

こんな仕組みがあったらいいなぁ…そんな人々の思いをすぐに具体化して実践していく、このアクションの早さが栗山町のなによりの魅力ではないでしょうか。

栗山町社協のその他の事業についてはこちら→栗山町社会福祉協議会ホームページ

画像牧野史子さん


パネルトーク

その後のパネルトークでは、吉田さんと牧野史子さん(介護者サポートネットワークセンター・アラジン)のお二人にご登壇いただき、栗山町の実践を参考に、都市ではどのような取り組みができるのか議論がなされました。

カフェなどの「場」を設けることで、介護者支援、またそれを超えた(包摂した)地域づくりをどのように展開することができるのか…お二人のアイディア、発信力に驚かされるばかりでした。


分科会とカフェコーナー

画像分科会での講義の様子。熱心に聞き入り、メモをとる参加者のみなさん。

分科会A : 支え手づくり〜介護者を支える会を立ち上げよう

ひとつ目の分科会では、「会」をつくることの大切さや、当事者だけでなく、「会」を周りから支えていく人(サポーター)の必要性について、介護者支援の現場でご活躍の方に事例を紹介していただきました。

始めに、中島由利子さん(介護者サポートネットワークセンター・アラジン)より、職業としてではなく、介護を担う立場に立っている人にとって、「会」がなぜ必要なのか、その意義役割、また「会」を運営していくうえでサポーターの存在が不可欠であることなどをお話しいただきました。

続けて、北原理良子さん(杉並介護者応援団)より、杉並介護者応援団がいろいろな「会」の運営支援をどのように行っているのか、また、公開講座の実施など地域での取り組みについてお話しいただきました。


画像分科会でのグループワークの様子。小さな部屋が、話し声と熱気でいっぱいになりました。

分科会B : 場づくり〜地域に開くカフェ、サロンをつくろう

ふたつ目の分科会では、‘誰でも訪れることができる’サロンやカフェの実践について、地縁型市民活動型それぞれのやり方で取り組んでおられる方に事例提供をいただきました。

まず、鈴木訪子さん (荒川区社会福祉協議会) より、荒川区でのサロン活動について、その内容や特徴をご報告いただきました。社協だけでなく自治会商店街民生委員などさまざまな機関・団体がサロンを媒体にしてどのように連携しているか、連携することで地域にどんな効果があるのかをお話しいただきました。

続けて、牧野さんより、杉並区の阿佐ヶ谷で展開しているCarer’s cafe & dining アラジンの取り組みについて、その設立背景や目的、カフェの日常の様子などをお話しいただきました。また、カフェの重要な機能として、支援者と介護者をつなぎ、地域のネットワークをつくるという「コーディネーター」の役割があるということを教えていただきました。


画像カフェコーナーの様子。テーブルの上にはお花を置き、室内には音楽も流れていました。

カフェコーナー : 出張!ケアラーズカフェ「一杯のコーヒーで介護者支援」

今回の「つどい」の特徴として、カフェコーナーを設けたという点があります。

上述のCarer’s cafe & dining アラジンのスタッフのみなさんが、今回の「つどい」のために、道具を携えて出張して来てくださいました。介護者を地域で支える「場」支援者と当事者がつながる「場」の実践として、参加者のみなさんにカフェの模擬体験をしていただこうと考えたものです。

また、例年「つどい」には、ご自身の介護体験や日頃の悩みを誰かに語りたい、聞いてほしいという方が参加されていました。そのような方の声を受け止める空間も設けたいと、今回はカフェコーナーを取り入れたのです。

温かいコーヒーとちょっとしたおやつで、参加者のみなさんにも、ホッとするひと時を過ごしていただけたのではないかな…と思っています。


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さて、今年度の「つどい」も大変活気に溢れ、充実した一日となりました。

嬉しいことに、後日、参加された方から登壇者の方あてに、カフェの立ち上げに関する相談が寄せられたとも聞いています。

たくさんの方のご要望に応える開催内容にできたことをとても嬉しく思うと同時に、今回得た気づきや参加者のみなさんとのつながりを今後どう活かしていくのか…

また次のステップを考えていかなければと気持ちを新たにしました。

これからも、いろいろな方々と連携しながら、継続して取り組んでいきたいと思っています。


(注1)平成22年度実施。一般社団法人日本ケアラー連盟が実施した調査に栗山町が協力して行ったもの。

対象は町内の全世帯。その他、いくつかの介護者支援に関する調査も連盟のHPに掲載されています。

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本レポートの内容は、東京ボランティア・市民活動センターの情報誌『ネットワーク』328号「東ボラレポート」のコーナーにも掲載しています。


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