(2005年12月29日 / 八木亜紀子 )
インド・移動式ショップの巻
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とある仕事でしばらくインドに行ってきました。
わたしが滞在していたのは南インドの農村部です。ぱらぱらと見える民家の向こうに、大きな椰子やタマリンドの木々立ち並び、その下で牛や山羊が草を食んだり、子どもたちがクリケットをやったりしている、のんびりとしたところです。
とても静かで穏やか・・と言いたいところですが、実はそうではありません。
景色はひじょうに穏やかですが、朝から晩までなにかとにぎやか。
まず、近所の民家の様々な声。生活の音。
正岡子規の詩に「夏の夜の音」というのがありますが、まさにあれと同じ。おしゃべり、台所から聞こえる音、水浴び、窓の開け閉め、などなど。それに加え、大音響のテレビやラジオから流れるにぎやかな映画音楽。
もともとドアや窓が開けっ放しという理由もあるけれど、「となりは子どもが帰ってきたな」「あの役者の映画を見てるな」という感じ。
さらに、あちこちにいる牛、にわとり、豚、山羊、犬や猫が鳴いたり、吠えたり。
近くのヒンドゥー寺院は大きなスピーカーから経典なのか音楽なのかをずっと流しっぱなし。道をゆくオートリキシャはクラクションを鳴らしっぱなし。・・だいたい想像していただけたでしょうか。
そして、夕方になると、様々な移動式ショップのおじさんたちが、声をあげつつ物を売りにやってきます。
移動式ショップの代表格は「ミルクマン」と呼ばれる牛乳売り。チリンチリンとベルの音がすると、みんなミルクを入れるアルミの缶を手に、あちこちから集まります。ミルクは1リットルずつの量り売りです。 ミルク入りの紅茶=チャイや、ミルク入りコーヒー、ヨーグルト風味のラッシーなど、乳製品を毎日とるインドのくらしには、毎日の新鮮なミルクが欠かせません。
そして、一日中町内のどこかに立っているのが、アイロンおじさん。これも移動式で、近所中から頼まれたシャツやサリーやズボンにアイロンをかけます。この「アイロンおじさん」は1日に100枚くらいはこなすそうです。ところで、このアイロンの熱源はなにか分かりますか?
リサイクルショップも移動してきます。この人は「プラスチック・ビン・缶リサイクル屋」さん。ちりがみ交換のように、古いものを集めて、小さな台所用スポンジや日用品と交換してくれます。昔はアルミ製の銀の水がめが主流でしたが、最近はカラフルなプラスチック製の水がめが増えたそうです。ですから、自転車に鈴なりになっているものも、金属製品とプラスチック製品が半分づつの構成をなし、素材の世代交代を感じることができます。
ところで、アイロンの熱源はなにか分かりましたか?
持ち手の部分はフタになっていて、その下の空洞に熱々のあるものを入れて使います。分かりましたか?