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(2022年12月24日 / TVAC )

TVACレポート

第39回 全国ボランタリズム推進団体会議(通称:民ボラ)in東京を開催しました!

キーワード
ボランタリズム 、 市民ジャーナリズム 、 アドボカシー 、 子ども・若者 、 市民調査 、 難民

ボランタリズムを推し進める上でのいろいろな課題を協議するなかで、ボランティア活動推進団体やNPO支援センターのミッション・運営のあり方を考える場として、第39回 全国ボランタリズム推進団体会議(通称:民ボラ)が2022年5月28・29日に東京・飯田橋会場及びオンラインで90名の参加により開催されました。

メインテーマは、「市民の声は社会を変えられるのか?」。

全体会及びテーマ別セッションの開催の様子をレポートします。

主催:ボランタリズム推進団体会議

(世話団体)茨城NPOセンター・コモンズ / 大阪ボランティア協会

静岡県ボランティア協会 / JUON NETWORK(樹恩ネットワーク)

市民活動センター神戸 / 世田谷ボランティア協会

ちば市民活動・市民事業サポートクラブ / 東京ボランティア・市民活動センター

東京メディエーションセンター / とちぎボランティアネットワーク

富士福祉事業団 / ボランティア・市民活動学習推進センターいたばし

山梨県ボランティア協会 (五十音順)

オープニング全体会

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市民ジャーナリズムは社会を変えられるか?~SNS時代の市民による発信を考える~

基調発題者

堀  潤 さん(NPO法人8bitNews 代表理事/元NHKアナウンサー)

司 会

鹿住 貴之 さん(認定NPO法人JUON NETWORK 事務局長)

元々公共放送でアナウンサーとして働いていましたが、本来の公共放送のあり方を実践したいと考え8bitNewsというものを立ち上げ活動を進めてきました。本来の公共放送というのは視聴者の声もしっかり伝えることが重要だと思うのに現実は放送局の都合でカットされてしまうのです。海外に当たり前にある「パブリックアクセス」という考え方、公共の電波は誰でもアクセスできなければならないという取り組みを実現したいと思います。
8bitNewsでは災害現場などで一般のニュースなどでは取り上げられないけれど支援が必要な情報などが当事者から発信されるもの(一次情報)にアクセスして取材したり、内部告発などによって社会問題となるようなテーマについても発信してきました。
ニュースを伝えるだけではなく課題解決に結びつくアクションに繋がる報道のあり方「ソリューション・ジャーナリズム」という考え方に取り組んでいて、8bitNewsが取り上げることで議員や官僚を動かしたり、省庁と市民の対話の場をつくったりすることが実現しています。現場の状況を伝えることが苦手なNGOやNPOから映像などの情報をいただきまとめたり編集したりするお手伝いもしています。市民活動団体などの活動の紹介に合わせて寄付してくださいという言葉を代弁するような支援にも取り組んでいます。
また、いくつもの紛争地域や北朝鮮などの現地取材を題材とした「わたしは分断を許さない」というタイトルの映画づくりを通じてまさに当事者の声を伝えてきました。
堀さんからはまさに現場の取材を通じて「事実」を伝えようとするジャーナリストとしての取り組みをお話しいただき、伝え、発信することの大切さを気付かされる内容でした。

テーマ別セッション①

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アドボカシー「黙認から発信、そして行動へ」

事例提供者

石原 達也 さん(NPO法人岡山NPOセンター 代表理事)

実吉 威 さん(公益財団法人ひょうごコミュニティ財団 代表理事/NPO法人市民活動センター神戸 理事・事務局長)

関口 宏聡 さん(NPO法人セイエン 代表理事)

横田 能洋 さん(認定NPO法人茨城NPOセンター・コモンズ 代表理事)

コーディネーター

鍋嶋 洋子 さん(認定NPO法人ちば市民活動・市民事業サポートクラブ専務理事・事務局長)

本セッションでは、アドボカシーの発信と行動へのモチベーションを維持し、展開手法を共有するために、4名の事例提供者の話を聴き、意見交換を行いました。
アドボカシーにおいて、大事なことは「具体的に、誰が、どこで、どのように困っているのか、どのようにしたら解決するのかを伝えていくこと」(関口宏聡さん/NPO法人セイエン 代表理事)。また、当事者の参加が必要であり、「当事者が動いていない取り組みは、ただのサービスでしかない」(石原達也さん/NPO法人岡山NPOセンター 代表理事)。具体的な方法として、「他県の先進事例などを紹介して、トップレベルで決断していただく」(横田能洋さん/認定NPO法人茨城NPOセンター・コモンズ 代表理事)ように促すことは有効です。
会場との質疑応答では、「アドボカシーによって何かが変わるという感覚や、勉強して新たなことを知り、それを地域の人たちシェアすると、モチベーションになる」(実吉威さん/公益財団法人ひょうごコミュニティ財団 代表理事/NPO法人市民活動センター神戸 理事・事務局長)、「NPOがアドボカシーをしやすくするためのアドボカシーが必要」(関口さん)などの意見が出されました。

テーマ別セッション①は、詳細のレポートをこちらからご覧いただけます。

テーマ別セッション②

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子ども・若者が発信する!~想いを社会に届けるためにできることを考える~

話題提供者

伊藤 博隆 さん(関東地方ESD活動支援センター)と高校生

入倉 聖 さん(山梨県学生ボランティア推進委員会 代表)

神元幸津江さん(NPO法人ボランティア・市民活動学習推進センターいたばし副理事長:進行)

子ども・若者がやりたいことに主体的に取組み、社会に発信するために必要なことを考えました。
伊藤さんからは自分の意見を人前で話すことによる「自分ごと」化、地域・学年が異なったり、大学生や大人と意見を交わすことによる多様性に富んだ意見交換の場づくり、SDGsの本質的な意味に気づき考えるための「自分ごと」化としてSDGs文化祭が高校生の主体的な参加の場をつくっていること、参加した高校生からは、意見を否定されない・大人が介入しないなかで自由に発案できる環境があり、行き詰まったときにはサポートしてくれるというスタンスの中で、問題への興味から、課題の見極め、自分にできることを考え、アクションを起こすことの順序・進め方を学べた、という報告がありました。
入倉さんからは子どもたちへの活動に高校生グループで主体的に取組む中で距離・目線が近い高校生だからこそできることが多数あり、想像力と行動力、瞬発力を生かせること、時間が持てること。それを叶えるために大人しかできないこともある。自分も大学生になって想いを形にする側・サポートする側の両方の役割を担っていきたいという意見がありました。
神元さんからは、子どもたちの自由な遊び場をという子どもたちの気持ちを残し伝えたいために、小学生自身が会議をし、議会に陳情をすることを決め、採択されるというアクションが生まれた中で、当事者視点の重要性、自分たちだけ、から、広く社会を見る視点が育つ、みんなの理解と共感があれば変えられるという気持ちにつながること、大人には子どもたちの気持ちを形にする、環境をつくるサポートが必要なことが提起されました。
参加者のディスカッションの中では、自身が困窮したり悩みをもっている学生・若者自身が、どのように意見や想いを発信していけるかも今とても必要な取組みでないかとの提起がありました。

テーマ別セッション③

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市民調査の倫理と実践 ~いい意味で「あざとい」調査とは~

話題提供者

津富 宏 さん(静岡県立大学 国際関係学部 国際関係学科 教授)

事例提供者・コーディネーター

大野 覚 さん(認定NPO法人茨城NPOセンター・コモンズ 常務理事・事務局長)

報告者・ファシリテーター

鈴木 佑輔 さん(東京メディエーションセンター 代表理事)

ファシリテーター

高山 和久 さん(東京ボランティア・市民活動センター 副所長)

市民団体によるアドボカシーでは、主張の根拠となる調査は重要です。コロナ禍で多くの市民団体が地域課題への影響などを調べ、発信しました。中間支援組織としても調査は重要で、市民団体の調査支援もできます。一方、仮説への誘導につながる質問、対象を傷つける設問、調査結果とずれる強引なまとめなど、倫理が疑われる場面もあります。
調査のあり方を学び、調査方法、リテラシーを身につけ、事例をもとに議論することで、調査の可能性を理解し、より良い市民社会へ力にできたらと企画しました。
実証研究とは、データを用いて「仮説」を検証する研究であり、仮説が正しいか正しくないかを知るためであって、仮説を裏付けるためのものではない。抽象を具体と付き合わせることによって「検証」する。一般化するためには、外的妥当性の検討は必ず必要で、偏ったサンプルを選んでいないか、サンプルが小さすぎないかなどを検討することになる。
なんのために調査をするのかが問われる。調査とは社会の改善のためであって、自団体の利益を追求するためではない。
調査のプロセスで生まれる、気づきが広がったり、関係が生まれたりもする利点がある。調査を支援するという視点も大事ではないか。

「市民の科学」という伝統がある。真実をもって語ることを大事にしていこうと結びになりました。

テーマ別セッション④

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市民活動の価値観とビジョンを問う〜ごちゃまぜ「市民社会」激論大会〜

話題提供者

森山 誉恵 さん(認定NPO法人3keys 代表理事)

鈴木 平 さん(NPO法人TEDIC 代表理事)

小池 達也 さん(一般社団法人よだか総合研究所 理事)

行 司

早瀬 昇 さん(社会福祉法人大阪ボランティア協会 理事長)

市民活動での倫理観や目指したい社会像が問われる場面が増えています。パワハラや経理不正が大きく報道され、一挙に活動継続が困難になります。ふるさと納税での寄付拡大は、地方財政の歪み拡大に加担しているかもしれません。当事者を事業の顧客とみなすと「不幸産業」となりかねません。社会の大きな潮流にあらがい、人権、民主主義、地方自治などを大切にした市民活動をどう進めるか。実践事例を共有しつつ、語り合いました。
児童養護施設の学習支援から活動をスタートした3keysの森山さんからは、ホームページのトップに掲載している「大切にしたいこと」を中心に、お話をいただきました。支援する子どもを寄付の商材にしないなど、寄付が集まりやすい事業やサポートしやすい子どもを支援するのではなく、あくまでも子どもにとって必要な支援を行っている実践を紹介いただきました。
東日本大震災後に石巻で子どもの支援活動の始めたTEDICの鈴木さんからは、活動の変遷を通したお話をいただきました。子どものニーズに合わせて活動を実施するも、その実績や、組織の選択によって委託事業が増え、元々実施していた形の子どもの居場所を閉鎖したこと、様々な要因で組織内部の相互理解の機会が不足したことによって、苦しい経験をしたことも経て、共有できる価値観を持つことの大切さについて語られました。
岐阜・⻄濃地域のローカルシンクタンクよだか総合研究所の小池さんからは、市民活動と自治・倫理についてお話をいただきました。自治とは、意見表明・参加の機会、また、ケアされる機会が十分に持たれていること。しかし、自治は嫌われ、また、ケアの価値が低すぎて、自治にとって重要な存在の当事者やケアワーカーが疲弊してしまうことについて問題提起がありました。
その後のディスカッションも含めて、立ち止まって振り返ることの大切さをはじめ、多くの学びがありました。

クロージング全体会

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国際的な市民のつながりを考える~市民社会、分断と暴力の罠にはまらないために~

問題提起

小泉 尊聖 さん(ひろがれ!ピース・ミュージアムいたばし 共同代表/アフリカ日本協議会 国際保健プロジェクト コーディネーター)

話題提供者

宗田 勝也 さん(難民ナウ! 代表)

コーディネーター

枝見 太朗 さん(富士福祉事業団 理事長)

今も世界各地で紛争が起きていますが、日本国内では報道もあまりなく、なかなか状況を知ることが出来ません。市民に何ができるのか考えたいと思います。
小泉さんは、平和構築の専門家として世界各地の紛争地で活動してきました。公的立場としてアフガニスタン(2007~2011年)、シリア(2014~2015年)で開発協力に携わる中で、日本の安全保障のための支援と現地の人々のためにという自分の想いに葛藤を感じていました。最終的には、個人の想いを大切にし、「市民の声で世界を変える」ために、一個人として活動を行なっています。シリアの市民の声を世界に届けることで、世論を動かし、シリアに平和をもたらそうとする活動、板橋区で平和を考える活動などです。
宗田さんは、2004年から当事者へのインタビューを通して、「難民問題を天気予報のように」ラジオで伝えています。「難民」という言葉で非人間化されてしまい、それが人々の無関心につながっているのではないか、との想いからです。ラジオ以外にもアートを通した活動や最近は京都に拠点を作りました。そして、あるミャンマー人との出会いから、ミャンマーの状況についてyoutubeでの発信を続けてきました。今現在も、軍が市民に銃を向ける状況が続いています。そんな中、自衛として武器を取る市民と「非暴力」という想いに葛藤を感じながら、それでも非暴力のためにできることを考え続けるとの言葉がありました。
こうした状況は、日本ではあまり知られていません。それでも、こうした状況を知ることで、動き出す人たちがいます。遠いどこかの出来事ではなく、国際社会の一員として、私たちも当事者の声を聞き、出来る事を考えていきたいと思います。

クロージング全体会は、詳細のレポートをこちらからご覧いただけます。

開催の概要、目的、出演者の紹介等についてはこちらでご案内しています。

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